雨が好き雨が好き 恋はいつも雨の季節の六月から始まった。六月はある意味で「危ない季節」でもあった。 何度かの経験で六月が近づくと用心していた。期待をしていた年もある。 雨の日は心が落ち着く。 知らないうちに雨模様になった時 本能はそれを分かっていてよく眠れる。 (まあ、いつもよく眠れるのだが・・・) 寝足りて起きた朝、夜中からの雨のせいだと気づく マンションのアルミサッシの密閉度は相当のものだが、それを飛び越えて雨の気配は 大気から直接伝わってくるようだ。 雨の日は匂いがある。 どろんこ遊びにつながる匂い 今、どんなに細い道でもびっちりと舗装され 街にむき出しの地球はなくなった。 そう云えばあの匂いは手放した懐かしさの一つになった。 その昔、お酒の燗を銅壺(どうこ)でしていた時期がある 凍えるように寒い夜 室内を汗が出そうに温かくぬくめて おまけに鍋物の湯気の力まで借りているのに 銅壺の中の煮えたぎった湯は炭でなく、ガスを使うことを嫌ってか 地球と結託してなかなか熱燗になってくれずじれたものだ。 雨の日は人を高揚させる。 そして呑みたくなる。 その昔着物で過ごしていた頃、雨の中、裾が乱れるのも、絹物が縮むのも物ともせず 一心に行きたいお店を目指して急いでいた若き日の自分がいた。 もっとも 若気の至りの頃 大きい荷物のある日はきっと寄り道をしていた。 (要するに道草が多かった。) 台風の日の雨風は母を興奮させ大量の食料品を買って子供たちを集め 雨戸を閉め、昼寝をしていた。 このことは私にしっかりと遺伝している。 |